***
希は、テローネのトカゲがむずむずと動いていることに気付いて足を止めた。
「テローネ? 聞こえる?」
くるりとトカゲが回る。
「空に白い布を固定してあるの。それがテローネから見て、施設を背にどこに見えるか教えて。私がテローネを安全な集合場所まで案内するから、みんなを誘導してほしいんだ。テローネにしかできないことなの」
トカゲは少し迷ったようにじっと希を見つめた後、くるくると動き出した。
***
合流地点にいるのはテローネ、希、ヘルツ、鏡、トランスポート、レナ。
「あれ? 小黒とアリシアは? 置いてきちゃったかな?」
困惑するレナの目の前に、手品のように小黒とアリシアが現れた。
「こんなこともあろうかと思ってな」
宙にはトランスポートの左手がかざされていた。施設の中から逃げる際に、アリシアを抱えた小黒を見たトランスポートが右手でストックしておいたのだ。
「レナがっ、速すぎるからだよなっ! 俺の左目に映る位置に、いてくれねぇと!」
小黒が肩で息をしながらアリシアを地面に下ろした。
「これからどうする‥‥ねぇ、テローネ?」
レナが黒豹に乗ったテローネを見ると、テローネは静かに微笑んだ。
「お友達だからこそお別れを告げたくてここに残っていましたの。さようなら‥‥ですの」
それだけ残して、闇に溶けるようにテローネと血まみれの黒豹は姿を消した。
「テローネ‥‥ありがとうね。みんなも、がんばったよね。ありがとう」
レナの言葉は涙に飲まれて消えた。
***
それから脱走者たちがどうなったのかは、それぞれの世界で話が紡がれていくだろう。
ただ、『ディラックの箱』と呼ばれた施設はその夜を境に崩壊したという事実だけは確かだ。
希は、テローネのトカゲがむずむずと動いていることに気付いて足を止めた。
「テローネ? 聞こえる?」
くるりとトカゲが回る。
「空に白い布を固定してあるの。それがテローネから見て、施設を背にどこに見えるか教えて。私がテローネを安全な集合場所まで案内するから、みんなを誘導してほしいんだ。テローネにしかできないことなの」
トカゲは少し迷ったようにじっと希を見つめた後、くるくると動き出した。
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合流地点にいるのはテローネ、希、ヘルツ、鏡、トランスポート、レナ。
「あれ? 小黒とアリシアは? 置いてきちゃったかな?」
困惑するレナの目の前に、手品のように小黒とアリシアが現れた。
「こんなこともあろうかと思ってな」
宙にはトランスポートの左手がかざされていた。施設の中から逃げる際に、アリシアを抱えた小黒を見たトランスポートが右手でストックしておいたのだ。
「レナがっ、速すぎるからだよなっ! 俺の左目に映る位置に、いてくれねぇと!」
小黒が肩で息をしながらアリシアを地面に下ろした。
「これからどうする‥‥ねぇ、テローネ?」
レナが黒豹に乗ったテローネを見ると、テローネは静かに微笑んだ。
「お友達だからこそお別れを告げたくてここに残っていましたの。さようなら‥‥ですの」
それだけ残して、闇に溶けるようにテローネと血まみれの黒豹は姿を消した。
「テローネ‥‥ありがとうね。みんなも、がんばったよね。ありがとう」
レナの言葉は涙に飲まれて消えた。
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それから脱走者たちがどうなったのかは、それぞれの世界で話が紡がれていくだろう。
ただ、『ディラックの箱』と呼ばれた施設はその夜を境に崩壊したという事実だけは確かだ。
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