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遠吠えは届かない
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「おはよう、アリシア」
 レナは朝食のプレートを持って食卓に着いた。
 アリシアと呼ばれた少女は長いブロンドを三つ編みにした大人しめの雰囲気で、味気ないプレートを突きまわしながらレナといつものように挨拶を交わした。
「朝の話、本当?」
「本当だよ」
 プレートの上のスープを口に運びながらレナが答えた。
「本気?」
「本気だってば」
 大胆な発言とは裏腹にいつものように飄々としているレナを見て、それなりに付き合いの長いアリシアもやや呆れ気味だ。
「アリシアもいく?」
「どこに?」
「だから、外の世界」
「そんな、急に言われても……」
「今日の朝言ったじゃん」
 何気ない会話のように、それでもひそひそとした声で話が続く。
「あのねレナ、今までこの施設を脱出しようとした人たちの話聞いたことある?」
「あるよ、捕まったんでしょ」
「捕まってどうなったか知ってる?」
「死んだのよ、みんな何も言わないけどなんとなくわかる」
 レナはロールパンをむしむしちぎってスープに落とし込みながら答えた。
「それでも、命をかけてでもいくの? 成功した人はいないのよ?」
「ここにいたって死んでるようなもんだわ」
 ここには自由がない。
 生きるとは自由を手にすること。
 束縛されずに生きること。
 それがレナの思い。
「いい、レナ。私はやめておく。何も聞かなかったことにする。でもね、ここの職員の中には私たちのようなナイトメアと呼ばれる能力を使う人がいるわ。あなたが外でお散歩するためには仲間が必要よ、絶対にね」
「わかってるって」
 アリシアの忠告を聞き流しながら、レナは食卓に置かれているメモ用紙にペンで文字を綴った。
「私たちが接触できる時間は食事の時間だけだもんねー」
 レナは空になったプレートを持って立ち上がると、メモをコルクボードに貼り付けた。物々交換だとか、詩を書いたので読んでくださいとか、手紙のやり取り(もちろん職員の検閲があるが)しませんかとか、ちょっとした交流が許されているボードはいつもメモ用紙で埋め尽くされていた。

『食事の時間の話し相手募集。面白いネタ持ってきてね! レナ』

「多分変な男が寄ってくるよ」
「そうかな?」
 アリシアは心配そうだったが、レナは何か確信しているようだった。

==========

選択肢
1-1)レナと話をする
1-2)個人行動をする
1-3)その他

※その他を選んだ場合、リアクションに反映されないか描写が少なくなることがあります。
※世界観・設定から逸脱したアクションの場合、リアクションに反映されないことがあります。

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