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遠吠えは届かない
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『なるべく大きめの、厚いコートをお願いしたい また何日かあと、受け取りに伺う  ヘルツ』
このメモ書きと大量の布から、希は大きなコートを縫い上げた。
ヘルツはコウモリの姿で通気口からレナの部屋に向かった。
「おっ、ヘルツ」
眠っていたレナはヘルツに突かれて飛び起きた。黒い、大きなコートをまとっているヘルツが少し不気味にレナの枕元にたたずんでいた。
「今後の方針を聞きたいのだが」
「えと、希が地図をもってるの。外部の人が協力してくれてるみたいね。完全に信じられるかどうかはわからないけど、本物ならそれに頼るしかないわ。テローネのトカゲが見て回って作った地図とも矛盾するところはないみたい。でも細かいところはまだわかってないわ。これもテローネがトカゲで監視カメラやセキュリティの場所を教えてくれるはず。あと、娯楽室に近い洗面所の天井にあるエアダクトが中庭につながってるらしいの。あと、所長が賞金首だって話よ。明日娯楽室でみんなに伝える予定」
目をこすりながら、暗闇の中レナが早口に説明した。
「所長が賞金首?」
「うん、それを医務室の変な医者が見てたって」
「もう少し内部を調査するべきか」
「うーん、そのエアダクトから本当に外に出られるのかどうか調べたいところもあるのよね‥‥コウモリになればできるかな? それから、私たちが脱出できるかどうかが『テスト』されているっていう話もあるの。そんなことをしてどうするのかはわからないけど」
テスト、賞金首‥‥ヘルツも唐突な話に驚いていた。
しかしここで長居をすることも危険だ。
「最後に頼みがあるのだが、コウモリになることでかなり体力を消耗している。血を分けてもらえないか?」
ヘルツの申し出にレナはぎょっとして、少し考え込んで、いいよ、と腕を差し出した。


バネット、テスト、賞金首の所長。この話を聞いて、彼らはどう動くのか。
闇、外部の協力者、変わり者の医者、杏柚の能力を格段に引き上げる『アクセラ』。テストと称して入所者たちを手中に収めているかに見えるバネットとディラックの思惑を打ち壊すファクターは十分にある。
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