忍者ブログ
Admin*Write*Comment
遠吠えは届かない
[98]  [97]  [96]  [95]  [94]  [93]  [92
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

***

希は、テローネのトカゲがむずむずと動いていることに気付いて足を止めた。
「テローネ? 聞こえる?」
くるりとトカゲが回る。
「空に白い布を固定してあるの。それがテローネから見て、施設を背にどこに見えるか教えて。私がテローネを安全な集合場所まで案内するから、みんなを誘導してほしいんだ。テローネにしかできないことなの」
トカゲは少し迷ったようにじっと希を見つめた後、くるくると動き出した。

***

合流地点にいるのはテローネ、希、ヘルツ、鏡、トランスポート、レナ。
「あれ? 小黒とアリシアは? 置いてきちゃったかな?」
困惑するレナの目の前に、手品のように小黒とアリシアが現れた。
「こんなこともあろうかと思ってな」
宙にはトランスポートの左手がかざされていた。施設の中から逃げる際に、アリシアを抱えた小黒を見たトランスポートが右手でストックしておいたのだ。
「レナがっ、速すぎるからだよなっ! 俺の左目に映る位置に、いてくれねぇと!」
小黒が肩で息をしながらアリシアを地面に下ろした。
「これからどうする‥‥ねぇ、テローネ?」
レナが黒豹に乗ったテローネを見ると、テローネは静かに微笑んだ。
「お友達だからこそお別れを告げたくてここに残っていましたの。さようなら‥‥ですの」
それだけ残して、闇に溶けるようにテローネと血まみれの黒豹は姿を消した。
「テローネ‥‥ありがとうね。みんなも、がんばったよね。ありがとう」
レナの言葉は涙に飲まれて消えた。

***

それから脱走者たちがどうなったのかは、それぞれの世界で話が紡がれていくだろう。

ただ、『ディラックの箱』と呼ばれた施設はその夜を境に崩壊したという事実だけは確かだ。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
メール
URL
コメント
文字色
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
secret
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
  • ABOUT
個人運営PBWプロジェクト/あなたと作る物語
  • ブログ内検索
  • カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
  • 最新コメント
[10/08 もつなべ@GM]
[09/30 だれかさん]
[09/06 もつなべ@GM]
[09/04 皇帝]
[04/04 もつなべ@GM]
  • 最新トラックバック
  • プロフィール
HN:
もつなべ
性別:
非公開
  • カウンター
  • 忍者サイトマスター
Copyright © 遠吠えは届かない All Rights Reserved.*Powered by NinjaBlog
Graphics By R-C free web graphics*material by 工房たま素材館*Template by Kaie
忍者ブログ [PR]