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遠吠えは届かない
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最終リアクションの公開を持ちまして、『遠吠えは届かない』を終了させていただきます。
長らくお付き合い頂きありがとうございました。
ご連絡のメールを持ちまして、メールアドレス等はHDDおよびGmailのアドレス、履歴から完全に削除させていただきます。

いろいろあるとは思いますが、GMの未熟さをお許しください。

***

5ターン、死亡判定あり、謎解きあり、PL間での情報交換は自由‥‥というスタイルをとったのですがこれがあまりうまくいかなかったようで(´・ω・`)
すいません、見苦しい言い訳です。
なお、ストーリーに関する疑問・質問等はご容赦ください。
リアクションに関しても個別にお答えすることは難しいです。

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***

希は、テローネのトカゲがむずむずと動いていることに気付いて足を止めた。
「テローネ? 聞こえる?」
くるりとトカゲが回る。
「空に白い布を固定してあるの。それがテローネから見て、施設を背にどこに見えるか教えて。私がテローネを安全な集合場所まで案内するから、みんなを誘導してほしいんだ。テローネにしかできないことなの」
トカゲは少し迷ったようにじっと希を見つめた後、くるくると動き出した。

***

合流地点にいるのはテローネ、希、ヘルツ、鏡、トランスポート、レナ。
「あれ? 小黒とアリシアは? 置いてきちゃったかな?」
困惑するレナの目の前に、手品のように小黒とアリシアが現れた。
「こんなこともあろうかと思ってな」
宙にはトランスポートの左手がかざされていた。施設の中から逃げる際に、アリシアを抱えた小黒を見たトランスポートが右手でストックしておいたのだ。
「レナがっ、速すぎるからだよなっ! 俺の左目に映る位置に、いてくれねぇと!」
小黒が肩で息をしながらアリシアを地面に下ろした。
「これからどうする‥‥ねぇ、テローネ?」
レナが黒豹に乗ったテローネを見ると、テローネは静かに微笑んだ。
「お友達だからこそお別れを告げたくてここに残っていましたの。さようなら‥‥ですの」
それだけ残して、闇に溶けるようにテローネと血まみれの黒豹は姿を消した。
「テローネ‥‥ありがとうね。みんなも、がんばったよね。ありがとう」
レナの言葉は涙に飲まれて消えた。

***

それから脱走者たちがどうなったのかは、それぞれの世界で話が紡がれていくだろう。

ただ、『ディラックの箱』と呼ばれた施設はその夜を境に崩壊したという事実だけは確かだ。
***

ツバメは警報機を鳴らし、防火シャッターを開けるなど撹乱と陽動を画策した。しかし電気で動くもののほとんどは動かなかった。もちろんそれがテローネの仕業だとは気付かなかったが、脱出しようとするものの誰かが仕掛けたものだろうとは検討がついた。
ツバメにとって脱出者に特に用はない。テストに協力しているとはいえ、誰かが見張っているわけでもない。しかも、事が起きてしまえば自分たちの命が危なくなるかもしれない。実際長い廊下をぬけるにあたり、傭兵らしい人間を目撃していた。
ツバメは目立たぬように燕の姿になり、夜の闇をぬけて駐車場へと飛んだ。そこに停めてあるジープに乗り込むと、エンジンをかけていつでも施設から発車できるように準備した。
後は五平がうまくやってこちらと合流するのを待つのみだ。

***

希は書置きを宙に浮かべると、施設に向かって走り出した。足元がよくないが、布を使って空中を歩ける希には関係のないことだった。しかし、施設からはかなり離れた場所に飛んできてしまっていたため、戻るにはそれなりの時間がかかる。

***

「バネット! 賞金稼ぎはどうなっている?!」
ディラックはいらだたしげに所長室をうろうろと歩き回っていた。
「お父様、もう終わりにしましょう」
バネットは冷たく父を突き放した。
「なんだと?」
ディラックが返す言葉を選ぶ間に、所長室の扉が開け放たれた。
「所長、ここは危険です。外に車を待機させてありますのでご案内します」
現れた男は、五平だった。
「梨野五平、あなたは‥‥」
バネットは五平の心中をはかりかねている。この期に及んで何をたくらんでいるのか? まさか、賞金‥‥
「お招きにあずかりました賞金稼ぎです、あなたの身柄を頂きに参りました。あれ?」
拳銃を向けながら素っ頓狂な声を上げたのは、例の医師、ウラジーミルだ。彼もまた所長を『換金』するため、この部屋に乗り込んできたところだった。
「そこの影の薄い人、あなたも賞金稼ぎかい? おかしいな、Sランクの情報は一握りの賞金稼ぎしか知らないはずなんだけど。それとも本意で所長を逃がそうと?」
ウラジーミルの言葉に五平は笑い声で返した。
「私は外から来た人間でして、その筋に詳しい知り合いもいるんですよ。仕事柄ね。所長の身柄云々に関してはここを無事出られてから話し合おうじゃないですか」
五平はスマートに物事を運ぼうとしたが、ウラジーミルのほうはそうでもないらしい。
「僕はややこしいやり方は苦手でね」
拳銃が五平に向けられたその瞬間、轟音と共に真っ黒な何かが部屋を駆け抜けた。
「戦争を探しに行かなくちゃいけませんの。だから邪魔をするおじさんは死んでくださいの」
血で作ったネズミを食べ、眼のない猫から眼のない黒豹になったそれに乗ったテローネが静かに言った。
床には、首元を噛み切られて絶命しているディラックが無造作に転がっていた。
五平は唖然とそれを見ていた。
「お嬢ちゃん、殺しちゃ賞金はもらえないんだよ」
「それは知りませんでしたの」
「これだとお兄さん、お友達に怒られちゃうんだけど」
「大人なら自分で何とかしなさいの」
興味なさそうにそう言うと、テローネは再び髪をなびかせながら外へと黒豹を走らせた。点々と血の跡を残して。
「ここにいる理由はなくなったね」
「そのようですね」
互いに向けた銃を下ろした五平とウラジーミルは、来た道を戻るように別々に部屋を出て行った。
ドアと分身越しに一部始終を把握した鏡は、目的を施設の脱出一本に絞った。
残されたのは死体と、少女が一人。

***

「お客さんは?」
訝しげに訊ねるツバメに、五平は肩をすくめて答えた。
「いい金になりそうだったんだけどな」
「仕方ないことです」
五平を助手席に乗せて、ツバメはジープを出した。
***

「ついに脱出が始まったみたいだな。さて、俺はどうするかな~」
小黒は一人ぶらぶらと廊下を歩いていた。外の世界がここよりもよくて、自由で、幸せになれるなんて保障はどこにもない。そんな風に思っていた小黒は、いざ作戦決行の夜になっても彼らしく飄々としていた。女性を守り、女性のそばにいて女性を幸せにすること。それこそが彼の幸せでもある。
ぶらりと通り過ぎようとした医務室、その中からアリシアの声がした。小黒はもちろんそれを聞き逃さなかった。
「アリシアじゃねえか、まだ引きずってんのか?」
サッと医務室に入り込む小黒。それと入れ違えに医務室を出るウラジーミル・リヤトニコフ医師。
「僕はこれから用事があるんでね、彼女をよろしく」
「おう、ってあんた何なんだよ」
小黒が不思議そうに後姿を見送ったが、ウラジーミルは片手を挙げただけだった。
「小黒、何でここに? 私といると作戦も全部ばれちゃうし、どこにいるのかも全部わかっちゃうのに」
泣き出しそうな顔で言うアリシアの肩に、小黒は優しく手をかけた。
「関係ねぇ。俺はアリシアを守る。それができりゃいいんだ。ここに残りたきゃ俺も残って、あんたを守るぜ」
かなりかっこつけて言った小黒だが、直後に思い切り開いたドアに頭をぶつけて悶絶した。
「アリシア! 探したんだよ!」
レナだ。
「ほら、みんな脱出するんだよ、一緒に行こう!」
「俺は無視かよ!」
「あら小黒、いたの」
「いたのじゃなくて! くそっ」
小黒は起き上がると、レナに向かって自分の思っていることをぶつけた。
「おまえは一緒に脱出しようって言うけどよ、ここを脱出したとしても能力者である以上追われる事に変わりはねえ。残れば自由はねえが命の危険もない。お前は友情だけで親友に命を賭けてくれって言えんのか!?」
「それは!」
しばしにらみ合う二人。
「私の足で、アリシアを解き放つ。だから私に命をちょうだい。私の命もアリシアにあげるよ」
レナが覚悟の一言を放った。
「そうくると思ったぜ。でも決めるのはアリシアだろ?」
小黒とレナ、二人の視線がアリシアに向けられる。
「‥‥やっぱりレナは馬鹿ね。私がいなきゃ、心配すぎてここでも生きていけそうにないわ」
レナと手を取り合うアリシア。それを見て小黒は小さく肩をすくめた。
「ここにいる女の子ってのはみんな危ないことをしたがる。おかげで命がいくつあっても足りそうにないぜ」
そういうや否や、小黒はアリシアを抱き上げてレナを見つめた。
「な、なによ、アリシアにちょっかい出しつつ私をそんな風に見つめても‥‥」
「バーカ、『守護天使の目』だ。おまえの能力、ちょっくら借りるぜ」
小黒の左目に映る限り、その能力者のナイトメアを自分のものにすることができる『守護天使の目』。小黒はアリシアを抱えてレナの後に続いて走った。信じられないほど足が軽かった。
 ネズミとトカゲで作戦が動いたことを知ったテローネは、ヘルツが倉庫から運んできたナイフで自分の手首を切った。
溢れ出る血液が床に滴り落ちると共に次々とネズミに姿を変えていく。
「さあ、私の醜い坊やたち。この建物のあらゆる電気配線を噛み切って回るんですの」
テローネの静かな声と共に、ネズミたちは一斉に走り出した。ネズミが電気配線を噛み切れば、電気を使っているもの、自動ドアやセキュリティは動かなくなるだろう。電灯の類も使えなくなる。
「それから、あの邪魔なおじさんも探しなさいの」
血の滴る手で目のない黒猫をなでながら、テローネが怪しく微笑んだ。

***

「テローネ、聞こえるかな?」
明染希がトカゲに向かってそう言うと、トカゲはくるりと回って答えた。自身の血でできたトカゲを通してこちらの声はテローネに聞こえるが、テローネからの返事はトカゲの動きを通すしかない。
「今からそっちに行って助けるから、今いる方角を教えてほしいの。空に浮かべてある布がどこに見えるか‥‥」
テローネが外にいるとして、その布は施設を背にしてどちらにあるかを聞いたが、トカゲは動かない。
数秒して、トカゲは『NO』の方向に回った。
「まだ施設の中ということ‥‥?」

***

ヘルツは暗闇にまぎれて外を飛んだ。塀の中にも外にも、武器を持った兵士が潜んでいるのが見えた。
空に浮かぶ布を見ながら、ヘルツは希の元へとたどり着いた。
「脱出が始まったのか? 状況は?」
「こっちはレナが一旦施設に戻ったところ。施設からここまではかなり離れているから、皆に正確な位置を教えたいんだけど、テローネとうまく連絡が付かなくて」
「それなら俺が伝えてきてやろう。それから、希望どおりのものを仕上げてくれて感謝している。これがあれば屋外でも活動できる」
「‥‥どういうこと?」
不意に伝えられた言葉に、希はキョトンとした。
「俺は吸血鬼だ‥‥日光に当たれば焼けてしまう。こういうモノが必須なんだ」
それは希が縫ったマントのことだ。ヘルツは一言、その礼を言っておきたかったのだ。
「それから、武装した兵士たちが内外に潜んでいる。注意することだ」
そういい残すと、ヘルツは再びコウモリとなり闇の中を飛んでいった。

施設に戻ったヘルツは、トランスポートの姿を見つけた。
「できれば武器を運びたいのだが」
「中庭の倉庫にある武器か?」
ヘルツ一人の力では中庭から武器を運ぶことは難しかった。いくら彼が空を飛べても、コウモリが持てるものは限られている。その点、トランスポートならば触れるだけで簡単に物を転送することができる。
「ナイトメアで何とかできればそれが一番だが‥‥」
トランスポートがそう答える間にも、あちこちで爆発が起こり、騒ぎは大きくなっていた。混乱に乗じて自分たちの作戦に加わっていなかった能力者たちも騒ぎ出したらしい。テローネのネズミが電気配線を噛み切ったことで、他の能力者たちの部屋のドアも開いたのだろう。
「武装した傭兵が大勢いるようだ、念のためあったほうがいいと思う」
「‥‥わかった、俺の能力が必要なら使うまでだ」
しばし考えた後、トランスポートはヘルツと共に武器を調達することにした。騒ぎに乗じればいくつかの銃を調達することができるだろう。
トランスポートはテローネのトカゲの誘導で敵の兵士が少ないルートを選んで駆け続けた。全力に近いスピードにも拘らず、呼吸が乱れていないのは、軍隊時代に受けた訓練の賜物だ。

***

月見鏡は分身を作り出し、自信は出来る限り安全な位置にいながらディラックの位置を探った。脱出しようと思えば能力を使ってドアをゆがめ外に出ることができたが、好奇心というもには勝てなかった。彼はディラックが何をたくらんでいるのか、直接聞きたかったのだ。

ツバメと梨野五平もまた別の理由でディラックのいる場所へと向かっていた。『所長』としてではなく、『賞金首』としてぜひ捕まっていただきたい。
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