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 ――ヘルツの場合

ヘルツはコウモリの姿でこっそり娯楽室に侵入し、会議に参加していた。
そこで情報を共有したヘルツの取った行動は‥‥

「エアダクトから外の様子を見てくる」
夜を待って、ヘルツはレナにそう告げた。
「もし作戦がダメになりそうなら、ヘルツだけでもそこから逃げて」
「今更馬鹿なことを」
レナの心配をヘルツは一笑に付した。レナの血をもらい、自身と力に満ち溢れている今の自分ならばテストが事実であろうとその先に何が待ち受けていようと、それを打ち破り外の世界へ行くことができると彼は思っていた。

ヘルツはテローネのトカゲが集めた監視カメラの位置を頭に叩き込み、死角を飛んでエアダクトから外へ抜けた。正真正銘、外の世界だ。
そこは、高い塀に囲まれた中庭だった。人のにおいはしない。おそらくここにはほとんど人がくることはないのだろう。塀はつるりとしたコンクリートでできていた。手や足をかける場所はない。人間がここを伝って下りることは難しいだろう。
庭の隅には倉庫があった。鍵がかかっていない。ヘルツは一時人間の姿に戻り扉を開け、中を見渡した。銃器の類が並んでいる銃架には鍵がかかっていなかった。これではさも取って下さいと言わんばかりだ。
テストならば、これを使えということか? この武器があれば戦闘能力がない者でも戦える。
さらにヘルツはコウモリの姿で塀の外に抜け、施設全体を見渡せる場所まで飛んだ。
施設は、小高い丘の上にあった。
施設まで伸びているらしい細い道を除けば、鬱蒼と木が生い茂る森の中だった。森の中の丘、これは施設を一般の目から遠ざけるには好都合の場所なのだろう。食料などの物資は細い道一本から供給されているはずだ。

ヘルツは自分が集めた情報を皆に伝えるべく、深い闇の中を飛んでいった。
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