――レナとアリシア
「ちょっと待ってよ、わからないよそんなこと」
アリシアは驚きを隠せなかった。ケンイチの情報によると、アリシアはバネットというこの施設の職員である女性と双子の姉妹である。そのことを告げられたからだ。
「驚かれるのも無理はありません、しかし、確かに彼女がそう言いました。そして彼女はアリシアさんにとてもよく似ていた。髪型さえ同じならば、瓜二つといっても過言ではないと思います」
ケンイチはつまらない冗談を言う男ではなかった。ましてやこんなに重大なことだ。
「ケンイチ‥‥いや、あの時はケンジか。俺がいなきゃどうなってたことやら。しかし、二人がそっくりだということは間違いねーな」
ケンイチがバネットからそのことを聞いた直後に現れた小黒もそう証言する。
「バネットさんの言うことが本当ならば、これはアリシアさんが記憶をとりもどす手がかりにならないでしょうか? それに立場は違えど血のつながった肉親です、実の妹さんがすぐそばにいるんですよ」
ケンイチは彼女が記憶をとりもどせればいいと、純粋にそれだけを思っていた。
しかし、他の仲間たちは別のことも考えていた。
――アリシアは、本当に私たちの仲間なのか?
彼女を疑うのは無理もない。バネットはこの施設の中枢に関わる人間で、鏡やトランスポートの話によれば『テスト』というものの中心にいる人物なのだ。
「ねえレナ、どう思う? 私は何のためにここにいるんだろう?」
すがるようにアリシアはレナの腕を取った。
「バネットって人が何かたくらんでるんだよ、アリシアを利用してるのかもしれない。そうじゃなきゃ実の姉をこんな場所に閉じ込めておこうなんてしないもの。何とかして助けようとするはずだわ」
レナはそう言ってアリシアをなだめた。
「私もそう思います。バネットさんには何か考えがあるのでしょう。でもそれが何かはわかりません」
ケンイチも同意する。
鏡はじっとアリシアの様子を見ていた。敵意はない。あるのは強い動揺。それは『嘘』からくるものではなく、純粋な『動揺』。鏡は少なくとも今のアリシアは『白』であると考えた。しかし彼女の意識しないところで何かが働いているという可能性も捨てきれない。
テローネはアリシアが『マグナ・マーテル』のような能力で作り出されたものではないかと考えていた。アリシアを通じて情報を入手するため。でもそれならばなぜわざわざ自分に似せたものを作ったのか。
つまるところ、みんなが動揺していた。なぜここにバネットの姉が、なぜアリシアの妹がテストを取り仕切っているのか? アリシアを信じていいのか?
アリシアへの疑心暗鬼の渦。
「まあ心配することないですよ、アリシアさんは俺が守りますから!」
アリシアの肩をがっしりと抱く、この男‥‥小黒(シャオヘイ)を除いて。
「そ、そうだよ! アリシアは私の友達だし! 誰が姉妹とかそんなことは関係ないよ!」
あまりにも接近しすぎている小黒とせめぎあいながら、レナもアリシアの肩に腕を掛けた。
「私、私いないほうがいいのかな‥‥みんなの足かせになりたくないよ‥‥」
アリシアがうつむきながらポツリとつぶやいた。
「そんなこと全然ない! アリシアさんがいないと俺が死んじゃう!」
「ちょっと小黒! さっきは『俺が守る』って言ったじゃない! あと、もうちょっと離れなさいよぉ~このナンパ男‥‥」
小黒とレナが腕をつかみ合って押し合いへしあいする。その様子を見て、誰となく誰かがクスクスと笑った。アリシアも顔を上げて少し笑った。鉛のようになってしまっていた空気が、少しだけ軽くなった。
「そうそう、女の子は笑ってる顔が一番かわいい!」
レナをいなしながら小黒が言った。彼なりの気遣いだったのかもしれない。
「ちょっと待ってよ、わからないよそんなこと」
アリシアは驚きを隠せなかった。ケンイチの情報によると、アリシアはバネットというこの施設の職員である女性と双子の姉妹である。そのことを告げられたからだ。
「驚かれるのも無理はありません、しかし、確かに彼女がそう言いました。そして彼女はアリシアさんにとてもよく似ていた。髪型さえ同じならば、瓜二つといっても過言ではないと思います」
ケンイチはつまらない冗談を言う男ではなかった。ましてやこんなに重大なことだ。
「ケンイチ‥‥いや、あの時はケンジか。俺がいなきゃどうなってたことやら。しかし、二人がそっくりだということは間違いねーな」
ケンイチがバネットからそのことを聞いた直後に現れた小黒もそう証言する。
「バネットさんの言うことが本当ならば、これはアリシアさんが記憶をとりもどす手がかりにならないでしょうか? それに立場は違えど血のつながった肉親です、実の妹さんがすぐそばにいるんですよ」
ケンイチは彼女が記憶をとりもどせればいいと、純粋にそれだけを思っていた。
しかし、他の仲間たちは別のことも考えていた。
――アリシアは、本当に私たちの仲間なのか?
彼女を疑うのは無理もない。バネットはこの施設の中枢に関わる人間で、鏡やトランスポートの話によれば『テスト』というものの中心にいる人物なのだ。
「ねえレナ、どう思う? 私は何のためにここにいるんだろう?」
すがるようにアリシアはレナの腕を取った。
「バネットって人が何かたくらんでるんだよ、アリシアを利用してるのかもしれない。そうじゃなきゃ実の姉をこんな場所に閉じ込めておこうなんてしないもの。何とかして助けようとするはずだわ」
レナはそう言ってアリシアをなだめた。
「私もそう思います。バネットさんには何か考えがあるのでしょう。でもそれが何かはわかりません」
ケンイチも同意する。
鏡はじっとアリシアの様子を見ていた。敵意はない。あるのは強い動揺。それは『嘘』からくるものではなく、純粋な『動揺』。鏡は少なくとも今のアリシアは『白』であると考えた。しかし彼女の意識しないところで何かが働いているという可能性も捨てきれない。
テローネはアリシアが『マグナ・マーテル』のような能力で作り出されたものではないかと考えていた。アリシアを通じて情報を入手するため。でもそれならばなぜわざわざ自分に似せたものを作ったのか。
つまるところ、みんなが動揺していた。なぜここにバネットの姉が、なぜアリシアの妹がテストを取り仕切っているのか? アリシアを信じていいのか?
アリシアへの疑心暗鬼の渦。
「まあ心配することないですよ、アリシアさんは俺が守りますから!」
アリシアの肩をがっしりと抱く、この男‥‥小黒(シャオヘイ)を除いて。
「そ、そうだよ! アリシアは私の友達だし! 誰が姉妹とかそんなことは関係ないよ!」
あまりにも接近しすぎている小黒とせめぎあいながら、レナもアリシアの肩に腕を掛けた。
「私、私いないほうがいいのかな‥‥みんなの足かせになりたくないよ‥‥」
アリシアがうつむきながらポツリとつぶやいた。
「そんなこと全然ない! アリシアさんがいないと俺が死んじゃう!」
「ちょっと小黒! さっきは『俺が守る』って言ったじゃない! あと、もうちょっと離れなさいよぉ~このナンパ男‥‥」
小黒とレナが腕をつかみ合って押し合いへしあいする。その様子を見て、誰となく誰かがクスクスと笑った。アリシアも顔を上げて少し笑った。鉛のようになってしまっていた空気が、少しだけ軽くなった。
「そうそう、女の子は笑ってる顔が一番かわいい!」
レナをいなしながら小黒が言った。彼なりの気遣いだったのかもしれない。
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