忍者ブログ
Admin*Write*Comment
遠吠えは届かない
[86]  [85]  [84]  [83]  [82]  [81]  [80]  [79]  [78]  [77]  [76
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 ――アルバート・ディラックの本音

「どうだバネット、脱走を企てている者達の様子は」
「娯楽室を拠点に相談を進めているようです。詳細を報告しますか?」
壮年の男――所長、アルバート・ディラック――の言葉に間をおくことなく答えるバネット。彼女はこの男の『娘』である。
「その必要はない、すべてお前に任せる。私にはお前たちのような特別な能力はないのだからな‥‥虚勢を張ってみても、所詮ただの人間、一人の研究者にすぎん」
ディラックの言葉に、ピクリとバネットの眉が動く。しかしディラックはそれに気付く様子もない。
「最終段階まで進むと見て、傭兵を百人ほど雇っておいた。銃は持たせるが全員ただの人間だ。能力者なら戦闘タイプの人間でなくとも何とかやるだろう。そうでなくては私の傭兵王国の要にはならん、ただの能力者だ。いつもどおり全員抹殺するか記憶を改竄してまたこの施設に放り込んでおくだけだ」
革張りの椅子を軋ませて、ディラックは足を組んだ。
「だが‥‥、今回の能力者たちはなかなかみどころがありそうじゃないか。最終段階を乗り越えたものを捕らえるために賞金稼ぎの連中とも契約を交わしておいたぞ。楽しみだな」
ディラックはニヤリと笑うと、葉巻に火をつけた。
バネットはそうですね、では失礼しますとだけ言うと、所長室を後にした。

所長室を出た廊下でバネットはバネットとすれ違った。
「あの人の話、聞いた?」
廊下の反対側から来たバネットが言った。
「くだらない話でした」
部屋から出てきたばかりのバネットが答えた。
そして二人のバネットは、何事もなかったかのように別の方向に歩いていった。

同時刻、自室にいた月見 鏡は深い溜息をついた。
一人のバネットは彼の能力、『リビルディング』により造られたものだったからだ。どちらが彼の創造物だったのかは、言うまでもないだろう。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
メール
URL
コメント
文字色
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
secret
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
  • ABOUT
個人運営PBWプロジェクト/あなたと作る物語
  • ブログ内検索
  • カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
  • 最新コメント
[10/08 もつなべ@GM]
[09/30 だれかさん]
[09/06 もつなべ@GM]
[09/04 皇帝]
[04/04 もつなべ@GM]
  • 最新トラックバック
  • プロフィール
HN:
もつなべ
性別:
非公開
  • カウンター
  • 忍者サイトマスター
Copyright © 遠吠えは届かない All Rights Reserved.*Powered by NinjaBlog
Graphics By R-C free web graphics*material by 工房たま素材館*Template by Kaie
忍者ブログ [PR]