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遠吠えは届かない
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「なぜこのテストに協力する者にまで危険が及ぶのか。それは、職員や警備員には協力者のことは話さないから。つまり彼らは疑わしい人間を攻撃してくる。敵をだますにはまず味方からって言うでしょ。それからこの施設について。話せるのはナイトメアの研究施設、ということくらいかしらね。私が渡すパスを持っていれば一般職員と同じように出入りできるけど、権限が必要な場所には入れないわ。そこにはこの施設やナイトメアの秘密が隠されているから」
テストが終わるまで施設を自由に出入りできる特別なパス、臨時職員として施設に寝泊りできる個室、ついでに三食付。バネットはこの条件を軽く飲んで書面にし、サインを書き入れた。
『バネット・ディラック』
「ん?」
五平は小首をかしげた。これは確か‥‥
「この施設の所長と同じ苗字のようですが」
「娘だもの」
特に気にした様子もないバネット。それでこの娘は若いながらもこの施設ではある程度の権限を持っているのか、と五平は判断した。
「返事はまた後日」
「ツバメさんとも相談してね」
五平はぺこりと頭を下げると、書類を手に部屋を出た。


コンコン、とドアを叩きながらおもむろに医務室に入るツバメ。
中には白衣の青年が一人いるだけだった。
「はい、どうかしましたか?」
ツバメの姿を見ても彼は特に動じなかった。医務室なのだから色々な人間が自由に出入りできるようになっているのだろう。
「俺はツバメ。外部から配達員としてここに出入りしてるんだが、バネットとかいう金髪眼鏡の女に『テスト』とやらに協力するように言われてな。ここはただの配達員に協力要請するほど人手が足りてないのか?」
単刀直入にツバメが言うと、青年は顎に手を当ててふーんとしばらく考え込んだ。
「テストが始まるのか‥‥でも、そういうことはあまりここの職員に聞いて回らないほうがいいかもしれないね。下手をしたら消されてしまうよ」
「そんなにヤバイことなのか?」
「入所者には絶対秘密のテストだからねぇ、これがテストだとわかったらテストの意味がなくなっちゃうんじゃないかな?」
「よくわからないが」
「外の人間を使うのは切捨てが楽にできるからじゃないのかな? 僕も外から来たアルバイトだからなんとも言えないけどね。でもバネットにテストに協力してほしいと言われたなら、協力したほうがいいんじゃないかな? 彼女からテストの話を持ちかけられた時点で、君はもう巻き込まれてるんだよ。断れば‥‥」
「消されるか」
だるそうにツバメは医務室を後にしようとしたが、アルバイト医師に呼び止められて振り返った。
「栄養ドリンク。疲れは美容によくないよ」
放り投げられたドリンクの瓶を軽くキャッチして、ツバメはその場で飲み干した。


「これが彼女の直筆のサイン。何かわかるといいですが」
五平からバネットのサインが入った書類を受け取って、それをツバメが凝視している。
「性格の悪い女だ。でも嘘はついてないな。五平の要求はちゃんと満たしてくれるはずだ。だけどこの仕事は断れない」
「断れない?」
「断ったらぶっ殺す、そういう意思があふれてるんだよ」
心底嫌な顔をしてツバメは書類を封筒に突っ込んだ。
「あいつの言ったとおりだ」
「あいつ?」
「変な医者だよ」
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