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遠吠えは届かない
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 意を決したような表情の希に、アリシアはレナの計画を伝えた。
「そんなことを?」
希は驚いたようだが、自由への出口がまさにそこにあるように感じた。
「私も手伝う」
「でも、それを成功させた人はいないんだよ?」
「このままここにいて後悔するより、やって後悔したほうがいいと思うの」
希は自分でも信じられないほど前向きになっていた。
「それに、計画にはこれが役に立つと思う」
希がハンカチに縫い付けて持って来たのは、ツバメが布切れに忍ばせておいた施設の青写真だった。
「それ、一体どうやって手に入れたの?」
アリシアが目を丸くして驚いた。
「これが本物かどうかはわからないけど、これ以外にも針を忍ばせておいてくれたこともあるの。信じてみる価値はあると思うんだ」
希は力強く言った。

「トランスポートの力で壁に穴を開けることはできないかな?」
「それは無理だな、俺が運ぶことができるのはせいぜい自分が持ち上げられるものまでだ。まあドアくらいなら何とかなりそうだが。それも俺が直接触れなければ移動させられないが」
「じゃあ、テローネのトカゲと連携させることは難しいね‥‥」
チェス版を囲んで、希とトランスポートが独り言のように言葉を交わした。
「この施設には外から誰かが出入りしているはず。食糧なんかは外から運んでこないと、さすがに施設内では用意できないでしょう。その出入り口を見つけるのと、監視カメラの位置の把握。これをテローネのトカゲにお願いするわ」
「わかりましたの」
さりげなく希から青写真――ハンカチに縫いこまれた地図を受け取るテローネ。
「あと、ここには隔離房のような場所があるでしょ、手に負えない収容者が連れて行かれるところ。わざとそこに入るようなことをして、こちらへの監視の目を緩めるの。でもだれかに暴れてもらわないといけないのね、これは」
希がうーんと考え込む。
月見 鏡の能力でコピーを作ればなんとかなりそうだが、ここで希はそこまで鏡の能力を知らなかった。それに鏡は今、別の人物へその能力を使っている最中だった。
「ケンジなら暴れそうだけどねー、そうなるとケンイチが危ないし」
なんとなく、レナがつぶやいてみる。
「そうなの。そこがクリアできれば何とか‥‥」
テローネからハンカチを返してもらい、希が再度うーんと唸った。
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